「水の恵み」を学ぶ親子バスツアーが2025年10月18日、新潟市南区で行われ、市内外の小中学生と保護者計33人が参加しました。白根排水機場では、その仕組みや水の大切さを学習し、白根グレープガーデンでブドウ狩りを体験したほか、収穫したブドウを使って、親子でスイーツ作りも楽しみました。農地を守る水利施設が農作物を育むために欠かせない役割を担っていることを知る1日になりました。
水の恵みを体感!親子バスツアー
新潟市南区で水の恵みを体感
私たちの暮らしを守る「白根排水機場」へ
新潟駅を出発したバスは、稲刈りが終わった田んぼの間を走り、白根排水機場に到着しました。
「今日の一番の楽しみは何ですか?」。北陸農政局職員からの問いかけに「ブドウ!」と小学生。
新潟市南区白根地区は食の恵みが豊かで、果物やコメの産地として知られています。
「ブドウもお米も、おいしく育てるにはたくさんの水が必要です。ここで質問です。ご飯一杯分のお米を作るのに、どのくらいの水が必要だと思いますか?」「答えはだいたい400リットル。お風呂2杯分です※」。
「そんなに!?」。驚きの声が上がりました。
※地域によって差があります

白根郷は川に囲まれた「輪中」地帯
「日本海に沿った新潟平野は自然に恵まれている一方で、水による被害に見舞われてきました」
排水機場の役割について、資料映像を使って北陸農政局職員が説明しました。新潟市は海より低い土地が多く、腰まで水に浸かりながら農作業が行われた地域もあったといいます。
白根地区は昔、海の中にあり、川が運んできた土砂が積もって土地ができました。信濃川と中ノ口川に囲まれた平らな土地で、川の水位より低いところに住宅や南区役所も建っています。川の堤防に挟まれた形から「輪中」と呼ばれています。
「放っておけば、水が溜まってしまいます。大雨が降れば水浸しになって、コメも果物も作れません。安全に暮らすこともできません。そこで、水を川へと汲み上げるためにこの排水機場がつくられました」


川より低い土地で暮らすために
白根排水機場には4台のポンプがあり、普段は2台を動かして水をくみ上げ、川へ流しています。大雨になるとさらに2台を動かし、中ノ口川へと排水します。「24時間、人が監視して、雨量を見ながらポンプを操作します。大雨になると、ここだけでなく、離れた場所にある排水機場も動かします」。水の溜まりやすい地形である白根郷には、合計3つの排水機場があり、水から私たちの暮らしを守っています。
参加した男子児童は「排水機場というところを初めて知りました。3つ全部動かすと、3秒でプールが空になるということに驚きました」と話します。ダムの貯水率の変化を調べた経験があるという女子児童は「昔は田んぼが水に浸かっていたとは知りませんでした」と水への興味を膨らませていました。

「白根グレープガーデン」に到着
次に向かったのは白根グレープガーデン。イチゴやブドウ、リンゴやキウイ、ル・レクチエなど一年中、果物の収穫体験ができる場所です。旬のブドウの収穫を前に、グレープガーデンの笠原さんから説明を聞きました。「白根は細長い唐辛子のような形をしています。川に囲まれていて、果樹園のすぐそばにも信濃川が流れています。白根といえば果物。どうして栽培が盛んになったか知っていますか?」
「川によって運ばれてきた土は栄養分たっぷり。果物を育てるのにとても向いています」。水はけが良く、肥料の持ちもいいそうです。
「水が豊富なのもありがたい。今年の夏、7月は例年の5パーセントしか雨が降らなくて困りましたが、信濃川からポンプで汲み上げてスプリンクラーにつなげているので、十分に水をあげることができました」
普段は排水されている白根郷の水だが、必要な時、必要な場所では恵みとして使われています。「白根がさまざまな果物の産地になったのは、土と水のおかげです」

さあ、収穫だ!
収穫したのは、ブドウの中でもとても甘く、皮ごと食べられる「ロザリオビアンコ」という品種。笠原さんは「緑色が強いものより、少し黄色味がある方が熟していますよ」とアドバイスしました。
参加者はブドウを見上げながら慎重に品定めしました。「おいしいのはどれですか?」と笠原さんに聞く姿も。「一番大きいものを選びました」という児童は、ずっしりと重い房を手に、満足そうな顔を見せました。

新潟の「旬」を親子で調理
収穫したブドウを使って、最後は新潟市アグリパークで調理体験をしました。講師を務めた料理研究家、佐藤智香子さんが「水の恵み、感じられましたか?食材を育てるには水も大事、太陽も大事。食べものは、水と切っても切れない関係にあります」と呼びかけました。
メニューは、ブドウとカスタードクリームなどを重ねたパフェと新米のおにぎり。自然の恵み豊かな新潟の「旬」をいただきます。おにぎりには南区で収穫されたばかりの新米を使いました。「二つ作りますが、一つは塩むすびにしてご飯の甘みを味わってください」


ブドウのパフェと新米のおにぎり
「おにぎりは『おいしくなーれ』と気持ちを込めながら握ってみてください。手で握って作る、それをいただくのは信頼の証です」と佐藤さん。子どもたちは三角おにぎりを作るコツも教えてもらったが、難しかったようで、まん丸ボールのおにぎりが並びました。
電子レンジで作るカスタードクリームにも挑戦。保護者らには「簡単。ダマにもならなくていいですね」「家でも子どもとやってみたいです」と好評でした。


水の恵みを「いただきます」
親子で力を合わせて作った料理を「いただきます」。塩むすびを食べた女子小学生は「おいしい。ご飯の味がいい」と笑顔を見せました。昆布でだしを取り、県産大豆のみそを使った、佐藤さん手製のみそ汁も振る舞われました。
ブドウのパフェを食べた参加者からは「カスタードとブドウがすごく合う」「ロザリオビアンコ、やっぱりおいしい」などと声が上がりました。おにぎりをおかわりする参加者もおり、満ち足りた顔がたくさん並びました。
最後に佐藤さんは「新潟の恵みが水からつながっていることを感じてもらえましたか」と言葉を投げかけた。「普段は見られない排水機場見学に始まり、水の恵みで育った果物、そしてお米を味わいました。新潟は、食がとっても豊か。その豊かさは、水があってこそだと感じていただけたのではないでしょうか」


参加者の声※一部抜粋
- 白根地域が堤防より低いため、排水をしっかりとしないと、農業も、普段の生活も障害が出ることが理解できました。近年は渇水にばかり注目しがちですが、過去に目を向ければ、排水施設が整っているからこその「食の恵み」ということが興味深かったです。
- 排水機場の役割を知ることができて良かったです。また新米や、採りたてのぶどうで料理をし、食の大切さを知ることができて良かったです。
- 白根グレープガーデンや調理実習はとても興味深く学ぶことや知ることが多かった。排水機場の説明は分かりやすかったが、工事をしているので(内部を)見られなかったのが残念。機械室や水路も見学したかった。
- 排水機場の仕組みや大切な働きについて学べ、農業を支えるための水利について理解が深まりました。